クロスボーダー組織再編
クロスボーダー組織再編とは、事業効率化、資金還流の容易化、グローバル実効税率の軽減などを目的として、グループ会社の資本関係や事業に関して国境を越えて再編成することを指します。多くの会社にとって、海外子会社を絡めたクロスボーダー組織再編は頻繁に行うものではなく、タスクを挙げることも難しいと思います。複数国における税務論点の検討が必要不可欠ですし、法務や人事等の論点もボトルネックになり得るため、多方面からの検討が求められます。
大手企業では法務、税務、人事、総務など各論点を整理する社内担当者が分かれており会計事務所としても税務のみの確認が求められるケースが多い印象です。一方で大手企業グループを除けば、上場企業であってもクロスボーダー組織再編の各論点に対応できる社内担当者が不足している企業は多いと思います。その場合、外部専門家には特定分野の検討だけでなく、マネジメント層と一緒にプロジェクトを推し進めるパートナーとしての役割が求められます。
SCSの特徴として、自社ネットワークが強く、各国の実務に精通している専門家が集まっていることが挙げられますが、その強みを活かして他の会計事務所より業務範囲を広く提案することができます。クロスボーダー組織再編で言えば、日本のみならず各国における税務論点の確認を行うことはもとより、その先の実行支援つまり株式移転、事業譲渡、法人設立や会社清算などの諸外国における登記手続きや税務申告まで一気通貫で提案することができます。
私は国際税務を専門分野としていますが、シンガポール事務所勤務時には登記実務や就労ビザ申請等も担当していた経験があり、その経験も活かしてクロスボーダー組織再編の実行支援まで含めたプロジェクトマネージメントの役割を担わせて頂くことが多くありました。クロスボーダー組織再編では各国での登記手続きに時間がかかりますし、人事異動などに伴って就労ビザの論点が発生することも珍しくありません。そうした場合に、「登記やビザの問題は専門外なので別の専門家に聞いて下さい。」となるのか、「おそらくこういった論点が問題になるかもしれない。うちの拠点にも聞いてみますね。」と言えるのとでは、その案件に対する寄り添い度合いが全く異なってきます。自分は税務専門家なのにそこまでやる必要があるのかということに迷いがあった時期もありましたが、AIの活用等によって単純な知識・情報の価値が相対的に低くなっていく中で、クライアントが会社としてやらなければならないことを俯瞰的にみてそれに深く寄り添ったサービスは、専門家の資質として今後より求められるのではないかと個人的には思っています。
最後の実行支援までクライアントに寄り添って一緒にやっていくというスタイルを各国で行うためには膨大な知識と経験を要することになり、実際にやりたいと思っても一朝一夕ではできません。その意味では、クロスボーダー組織再編をクライアントに寄り添って支援することができるのは、各国に強い自社ネットワークをもつSCS-Invictusグループだからこそ自信をもって提案できるサービスだと思っています。また、クライアントとこうした深い関わり方をすることによって、クライアントや各国SCS-Invictusグループの仲間と共有できる一体感や達成感は得難いものがあります。長いプロジェクトになると困難に直面することも少なくありませんが、日々奮闘して困難から学び、クライアントに寄り添って誠実なアドバイスを続けることで、結果としてクライアントから「この人」にお願いして良かった心から思ってもらえることが多くなると信じています。詰まるところ、専門家の業務から得られる幸福感は、そういった感謝や信頼関係に尽きるところがあると思っています。