
インタビュー
SCS-Invictusグループの他のメンバーと比較しても、私の入社前のキャリアは特殊な部類に入ると思います。入社以前は会計業界と全く関係がない、発売前のゲームソフトや電化製品等のテスト、いわゆるデバッグ業務を専門に行う会社で働いていました。幼少期からゲームが好きであったこともあり、発売前のゲームをプレイする仕事に興味があった、という理由から始めた仕事だったのですが、実際に仕事としてゲームをするのは想像以上に大変で、RPGであれば全ての壁に体当たりをして、すり抜けられる壁がないかをチェックしたり、各テキストの誤字脱字がないか、音声と連動しているかどうか等のチェックをしたりと、細かい作業の積み重ねや高い忍耐力が要求される仕事でした。 その後、ゲームを仕事として行う事に限界を感じた私は、父が公認会計士として仕事をしていたこともあり、会計の勉強を始めたいと強く感じるようになりました。父に相談した所、父がアーサー・アンダーセンで勤務していたころの後輩で面白い仕事をやっている、ということで紹介されたのがグループ代表の少徳でした。
上記のような経緯で2010年よりSCS-Invictusグループで働く事となり、最初の2年半は東京事務所にてジュニアスタッフとして勤務しました。他のメンバーと比べてバックグラウンドとしての会計、税務の知識が圧倒的に不足している状況からのスタートでしたが、当時の東京事務所ではパートナーと直接仕事する機会に恵まれ、代表の少徳と一緒に新規顧客の訪問をするなど、非常に貴重な経験をさせてもらう事ができました。東京事務所では主にアウトバウンド案件の問い合わせ対応業務、投資用SPCの連結会計業務や各種コンサル案件のみならず、M&Aの提案やDD案件のサポート業務、更には欧州系監査法人との協業による監査補助業務等、幅広い業務を経験する機会を得られたことで、様々な知識を急速に吸収できた時期であったと思います。
入社して2年半が経過した頃、当時の進出ブームによりクライアント数が急増し、人手が足りない、という理由から2012年にマネージャーとしてシンガポール事務所に転籍し、海外での業務がスタートしました。これまでは海外に進出するクライアントに対し、あくまで日本からのサポートでしたが、シンガポールでは実際に進出をしてこられるクライアントの様々な悩みや疑問点を直接解決する側として、会計、税務、労務、法務等に限らず、シンガポール現地の商習慣や日常生活におけるアドバイスも行えるよう、自身のブラッシュアップを行う必要がありました。シンガポール事務所には約5年8ヶ月在籍し、延べ250社以上のクライアントに対しマネージャーとして関与することとなり、クライアントの年間スケジュールを念頭に置き全体の業務をコントロールしていく事の大切さを学んだ時期でした。
2017年11月頃、当時すでにオランダに移住していた少徳が久々にシンガポールに帰ってきたタイミングで、二人でお酒を飲む機会がありました。その際、退社が決まっていた当時の台湾事務所代表の後任がなかなか見つからないという話になり、「誰もいないのであれば自分が行きます」とその場で立候補したことを今でも覚えています。その後、当時のグローバルパートナーによる検討を経て、2018年より台湾事務所の責任者として台湾に転籍しました。事務所の責任者として、クライアントに対してのみではなく、会社の全ての事項に対しても責任を負う、マネジメントポジションとしての業務を行うことになりました。台湾オフィスの責任者として、転籍当時から現在に至るまで、自社の決算、税務申告や給与計算といったルーティンワークのみではなく、採用の面接、新規クライアントの開拓、社内規程の改訂、導入する福利厚生の検討、更には社員の経費申請の承認等の細かい業務まで、台湾オフィスの全てを管轄しています。もちろん、責任者といってもクライアントに対しては、一プレーヤーという立場ですので、クライアントへの業務提供も並行して行っています。言葉にしてみるとなかなか大変そうな印象になりますが、自分の意思決定が会社の方向性を決めることになるというのは、責任も重大ですが非常にやりがいを感じるものであり、忙しいながらも充実した日々を過ごしています。
シンガポール時代まで主に使用していた英語ではなく、中国語の環境で責任者として業務を行うことの苦労はもちろんありましたし、言語面については今でも苦労はしているのですが、台湾拠点の立ち上げから継続して勤務してくれているメンバーを筆頭に優秀な社員にも恵まれ、台湾拠点設立から10周年を無事迎えることができました。 2022年よりグローバルパートナーの一員となり、現在は台湾事務所のみではなく、グループ全体の運営にも関与しています。
こうして振り返ってみると、幸運なことにSCS-Invictusグループのスタッフ、マネージャー、拠点長、パートナーという全てのポジションにおける職務を経験させてもらっており、その全てが密度の濃い貴重な経験として、現在の自分の大きな財産になっています。
グループとして守るべき最低限の規律や統制を土台としながら、 個人や事務所のチャレンジを積極的に認めていく。
SCS-Invictusグループは決して大きな組織ではなく、Well-organized されていない部分も多々ありますが、その分個人の自主性に任せる部分が多い、というのが大きな魅力であると言えます。個人の自主性に任せるというのは、ともすれば管理を放棄している、という風にも捉えられがちですが、決してそういうことではありません。
グループとして遵守すべき最低限の規律や統制を土台とし、個人や事務所としてチャレンジしたい、という上乗せ部分はグループとして否定しないし、積極的に認めていく、という組織であると考えて頂ければと思います。
各拠点の各ポジションで経験できる業務は非常に密度の濃いものであり、私が東京事務所やシンガポール事務所で経験してきたように、グループのパートナーと直接仕事する機会を入社後すぐに与えられる等、大組織では考えられないような経験を多く積むことができます。自主性を重んじる、ということは個人としての責任も多くなりますし、当然プロフェッショナルであることも求められますが、SCS-Invictusグループでの業務を通じて得られる圧倒的な経験を自身のものにすることで、責任感を持ち、かつ自主性を発揮できるプロフェッショナルに自然に成長できると思います。実際にこのようなマインドを持ったメンバーが各拠点のコアメンバーとして活躍しています。
私はシンガポールから台湾に転籍している為、双方の国、地域における業務面の違いについて少し触れてみたいと思います。
細かな違いを挙げるときりがないのですが、シンガポールはほぼ完全にデジタルであったのに対し、台湾では原本を使用する文化が根強く残っている、という点が一番大きな違いではないかと思います。例えば登記変更手続をする場合、シンガポールではサイン/押印を行った書類を政府のオンラインサイトにアップすることで手続が出来ましたが、台湾では押印した書類原本の提出が原則として求められます。また、台湾では会社の売上を計上するにも、統一發票という政府が規定する正式な売上証憑を発行する必要があり、裏を返せば会社の費用を計上するにも、購入した商品やサービスに係る統一發票を入手しておく必要があります。シンガポールでも同じようなインボイス制度が採用されていましたが、台湾ではこれを手書きで行う会社も多数存在し、請求内容の修正が発生するたびに原本の回収、再発行といった手間が生じることも多くあります。こういった実務的な煩雑さはありますが、その分コンサルティングとして関与する余地も多く、業務としては面白いと感じる部分でもあります。台湾政府としてもシンガポールのように税務申告や行政手続を全面的にデジタル化していく方針ではありますが、移行の過程においてはまだまだ様々な課題が生じるはずですので、クライアントの助けになれるよう、最新の動向は常に把握するように心がけています。
台湾事務所という目線においては、やはりクライアントに対してのしっかりとしたサービス提供を継続し、クライアントと共にSCS台湾としても成長すること、が目標になります。
SCS-Invictusグループとしては、昨今の課題であるAI化の波にとらわれることなく、当社グループならではの価値を今後も継続してクライアントへ提供し続ける、という点が課題であり目標になってくるのではないかと、個人的には考えています。
当社の採用ページを見てくださっている方は、海外で働いてみたいと考えていらっしゃる方が多いものと思います。海外での勤務は人生の大きな転機になり得るものですが、これは勤務する本人のみではなく、その家族にも言えることです。
私自身の話をしますと、当時、海外旅行もほとんど経験がなく、英語も全く話せなかった妻に、シンガポール事務所への転籍を機に、入籍して一緒についてきてもらいました。慣れない英語の環境に加え、親しい友人が周りに全くいない中、私は業務で遅くなる日々が続くという状況で、妻のストレスはどれ程であったのか、想像もつきません。ただ、そんな中、シンガポールという国の活気やバイタリティー溢れる様々な国籍の人々と触れ合う事で、海外への生活が徐々に楽しいと思えるようになってきたそうです。初の海外生活がシンガポールからスタートした、という幸運もありましたが、海外生活をスタートしてからはや十数年、今ではシンガポールと台湾のそれぞれで出産した娘二人を、決して上手ではないものの中国語も駆使しながらしっかり面倒を見てくれています。
お子さんがいる家庭では海外生活において教育面はどうなるのか、という点は凄く気になるのではないかと思います。具体的に言うと、外国語環境で教育を行うのか、日本語環境で教育を行うのか、というのが大きな悩みになるのではないでしょうか。ご家庭それぞれで様々な考え方があると思いますし、どれが正解、ということはないと思いますが、私と妻は日本語環境での教育を選択し、上の娘は日本人学校、下の娘は日系の幼稚園に通っています。ローカルの小学校やインターの学校に通わせる事で、英語力や中国語力が飛躍的に伸びるだろうことは事実として言えると思いますが、その反面、日本語で物事を考える力が中途半端になってしまうのではと考え、日本人である以上は日本語で考えるという習慣をつけて欲しいと願い、日本語での教育を選択した、というのが理由です。海外での生活が長くなると自分が何人であるのか、というアイデンティティも曖昧になりがちであるように感じます。まずは日本人として思考するときは日本語で行う、という習慣を身につけてもらうことにより、自分は日本人である、というアイデンティティも持ってもらうことを期待した選択だったのですが、将来的にどうなるのかは分かりません。ただ、子供達を見ていると日常生活は全て日本語で行いつつ、最近では中国語の勉強にも積極的に取り組むようになってきており、良い選択だったのかな、と今のところは感じています。
余談が過ぎましたが、海外で働くことを検討する際には、家族と一緒にその国に住む、という観点も踏まえた上で、ご検討いただければと思います。
海外で働くということは、当然ながら海外で生活をするということになり、海外での生活においては、日本での生活における当たり前が全然当たり前ではない状況も多数存在します。どの国においても、その国がこれまで培ってきた文化や考え方があり、日本での常識が通じないといったことはある意味で当然ですし、海外で生活する以上はその国に住まわせてもらっている外国人として、その国の人々をリスペクトし、受け入れる意識はとても重要であると、個人的には考えています。
もちろん、日本人として譲れない部分は持ち続けるべきですし、個人として受容しがたい部分についてはきちんと自分の意見をぶつけるべきですが、英語などの言語が上手に話せるということよりも、自分が住む国の文化や人々を理解し、一緒に生活していくという意識を持てるかどうかが、海外での生活においては重要な要素になると思います。そのようなマインドをもって、我々と一緒に働いてくださる方の応募を、私個人としてはもちろんのこと、SCS-Invictusグループとしてお待ちしています。